TOP>WORKS>「女子中学生の誘惑」1話

「先輩のこと、ずっと好きでした。

 私と付き合ってください、おねがいします。」


そう言って頭を下げる少女。

まだあどけない彼女は、僕が通う学校の中等部の女子生徒だ。

靴箱に、僕を呼び出す趣旨の文書、いわゆるラブレターが入っていた。

だからこうして、指定された場所へやってきたわけだが。


そこで待っていたのは、全く面識のない女の子だった。

だいいち、僕は中等部の生徒のことなんて、ほとんど知らない。

稀に、高等部でも噂になるくらい、かわいい子が何人かいる。

知っているとしても、その数人くらいなものだ。


そして、今僕の目の前で健気に頭を下げている少女。

この子はその少数のうちに入っていない。

不細工というわけではないが、特にかわいいわけでもない。

なんというか、特徴が無い顔つきをしている。

髪型も、特別長くもなく、かといって短くもない、質素な黒髪のストレート。

「 普 通 の 女子中学生をとことん追求しました」

そんなキャッチコピーでも付けれそうなくらい、個性が薄い女の子。

身長もどちらかというと低めで、目立ちそうにない。


部活用のエナメルバックを、肩から斜めにかけている。

そこから察するに、一応部活はしているらしい。

バックには「付属中女子バレーボール部」の文字。

「運動部に所属しているから」というのは根拠として微妙だが、内気な感じはしない。

普通に学校に通い、普通に部活をし、普通に友達と遊ぶ、普通の女子中学生。




さて、普通普通と、まるで嫌味のように並べ立ててしまった。

しかし、それは僕が彼女に見覚えがないことを強調して説明しただけのことである。

だから別に彼女を非難するつもりは全くない。

むしろ面識がない年下の女の子に告白されるなんて、初めての経験で、素直に嬉しい。

男として、少し自信が持てた。

なんだか健気でいい子そうだし、告白されて悪い気は全くしない。

しかし、だ。


「ありがとう、でも、ごめんね。

 僕は今、付き合ってる人がいるんだ。

 だから、君には申し訳ないけど、君とは付き合えない。

 本当にごめん」


ゆっくり、そしてはっきりと、目の前の少女に告げる。

そう、僕は今、同じクラスの女の子と付き合っているのだ。

だからこの子の気持ちにはこたえられない。


「……わかりました」


少しの沈黙の後、彼女は顔を上げてそう言った。

彼女の微笑みが、なんだか切なくて、僕の胸は少し痛んだ。


「あ、あの! でも!

 せっかく、やっと、こうしてお話することができて、すごく嬉しいです!

 もしよかったら、普通に後輩として、先輩と仲良くさせてもらってもいいですか?」


普通、か。

たしかにこの子とは、それが一番しっくりくるかもしれないな。

なんてことを思いながら、僕は快くその申し出を受け入れた。

その後、僕らはお互いの連絡先を交換し、その日は別れたのだった。



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