TOP>WORKS>「女子中学生の誘惑」7話

僕が風邪を引いて学校を休んだ日。

あの日以来、僕は美香ちゃんに完全に心奪われていた。

美香ちゃんとの背徳的な関係。

甘くて危ない日々が続いた。


以前は、僕の方から美香ちゃんにメールをすることはなかった。

あくまで美香ちゃんから届いたメールに返信するだけ。

それが今ではどんどん僕の方からメールを送る。

美香ちゃんの返信が遅いと、僕は他の事が一切手につかなかった。


「ねぇ、美香ちゃん、明日のお昼休み一緒にお弁当食べようよ」


「うーん、ごめんなさい。

 明日は部活のみんなと食べる約束してるんです」


「そっか……さみしいなぁ……」


「もう〜、いい子だから我慢してください。

 先輩は高校生だから我慢できるでしょ、ね?」


「うん……」


こんな日々が続いた。

サクラと過ごす時間はどんどん減った。

その代わり、美香ちゃんと過ごす時間がどんどん増える。


さすがにサクラも不審がり始めた。

それでも僕は美香ちゃんと会いたかった。


「美香ちゃん、今度の週末は会える?

 ひさしぶりにデートに行こうよ!」


「ごめんなさい。

 また今週末もバレー部の試合があるんですよ」


「あ、じゃぁまた応援に行くよ!

 何か差し入れ持って行くから!」



そんなやりとりがあった後の週末。

僕は宣言通り、美香ちゃんの試合の応援に来ていた。


最近、中等部女子バレーボール部は対外試合が多い。

先々週、先週と続いて、今日で3週連続の対外試合だ。

高等部の生徒の姿は、僕以外にもチラホラと見られた。

しかし3週連続で応援に来ているのは僕くらいだろう。



会場に到着。

僕は早速、美香ちゃんの姿を探した。


と、見慣れたユニフォームを着た集団を見つけた。

我が校中等部の女子バレーボール部だ。

彼女たちはロビーで柔軟体操をしていた。

でも、美香ちゃんがいない?



「あ、あの……すいません、美香さんいますか?」


僕は思い切って声をかけた。


「美香ですか?

 えーと……今はちょっといないんですけど、何かご用ですか?」


「あ、はいっ!

 あの、差し入れを持ってきたので、美香さんに渡しておいてもらえますか?

 みなさんの分もあるので、よかったら食べてください」


「わぁー! ありがとうございます!」


本当は美香ちゃんに直接渡したかったけど……

いないなら仕方ない。

とりあえず差し入れは渡した。

僕はその場を立ち去ろうとした。


「あのー、先輩ってこの間の試合も見に来られてましたよね?

 もしかして、美香の彼氏さんとかですか?」


唐突な質問。

僕は一瞬言葉に詰まる。

まさか浮気相手だなんて言えるはずもない。

ここはなんと答えたらいいものか。


「え、ええ、えと……!

 そういうのじゃ、な、なくて……!

 美香さんは、その、憧れの人、みたいな……」


ちょっと待て、ちょっと待て!

憧れの人って!

男子高校生が女子中学生に対して、憧れの人って!


でも、なんだろう……

考えてみれば、確かに「憧れの人」かもしれない……


「キャー! すごーい!

 がんばってくださいね、先輩!

 美香ってすごくいい子だし、私も先輩の恋、応援しますね!」


女の子は興奮気味だ。

とても楽しそうにエールを送ってくれた。

なんだかだんだん恥ずかしくなってきた。

僕は手短にお礼を告げた。

そして、そそくさとその場を離れたのだった。



「あ、美香! おかえりー!

 ねぇねぇ今ね、高等部の人が差し入れ持って来てくれたよ!

 それにしても、すごいね美香!

 高等部にファンがいるとか、やるじゃーん!

 付き合ってあげなよー! あの人いい人そうだったよー!」


「もうー! 香織ったら冷やかさないでよー!

 そんなんじゃないってー!

 ていうか私そういうの興味ないもーん!」


「またまたーそんなこと言っちゃってー!」


どうやら美香ちゃんが戻って来たらしい。

もう一度行って、美香ちゃんに挨拶してこようか。

そう思ったが、なんとなく行きづらかった。


美香ちゃんは、あっという間に部員たちに囲まれた。

僕は美香ちゃんが茶化されている様子を、遠目に眺めた。

美香ちゃんがとてもキラキラ輝いて見えた。

僕の憧れの人……


ついこの間までは逆だった。

僕が美香ちゃんにとっての憧れだった。

アプローチをかけてくるのは、美香ちゃん。

周りに茶化されるのは、僕。

それが今では、立場が逆転してしまった。


僕の眼差し。

それは、憧れの先輩を見つめる少女の眼差し。

美香ちゃんのことを想えば想うほど、胸が締め付けられた。


「やっぱりここに来てたんだ」


懐かしい声。

僕は振り向く。

そこには僕の恋人。

サクラが立っていた。



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