TOP>WORKS>「女子バレー部の後輩たちに…」1話

「たのむ! 僕らのコーチをしてくれ!」


僕の名前は中野あゆむ。

男子バレーボール部のキャプテンだ。


僕ら男子バレーボール部は、長い歴史をもつ名門部。

僕の学校は、もともと男子校だった。

男子バレーボール部は、我が校の看板部として数々の実績を重ねてきた。


しかしそれも昔の話。

というのも、ここ何年かは市の大会でベスト8に食い込むのがやっと。

僕が入学してからはもっと酷い。

直近3年間は対外試合で一度も勝ったことがないのだ。

男子バレーボール部は、見るも無残なまでに落ちぶれてしまっていた。


「ちょっと、あゆむくん、いきなりどうしたの?

 お願いだから、頭を上げて?」


彼女の名前は、川辺沙織。

ポニーテールが良く似合う、高身長でスタイル抜群の女の子。

彼女は女子バレーボール部のキャプテンである。


数年前、男女共学になった際に設立された女子バレーボール部。

当時の女子バレーボール部には、ろくな指導者がついていなかった。

また、公立校であるため、優秀な選手を意図的に集めたわけでもなかった。

にもかかわらず、女子バレーボール部は初出場した大会で、なんと優勝したのだ。

もちろん当時の部員は新入1年生部員のみ。


その後も、数々の大会でことごとく優勝。

学校は彼女たちの秘められた力に期待を寄せた。

それまで男子バレーボール部の監督を務めていた先生は、女子バレーボール部の監督に任命された。

この先生は元国体選手。

監督としての手腕も、高く評価された人物である。


この監督の異動は、男子バレー部の斜陽っぷりを顕著に示すものだった。

女子バレーボール部のすさまじい功績の手前、OB達もその決定には反論できなかった。



女子バレーボール部は、優秀な指導者の下で練習を重ねた。

それにより、彼女たちは恐ろしい勢いで成長。

そして第1世代目の部員たちが3年生になった夏の最後の大会。

女子バレーボール部は、ついに全国優勝を果たしたのだった。


一方、男子バレーボール部はというと。

チームを引っ張ってきた監督を失い、みるみるうちに弱体化。

現状に至るというわけである。


しかし事態はそれにとどまらない。

僕が恥を忍んで頭を下げている、重大な理由。

それは、今の男子バレーボール部の惨状に耐えかねた、OB達による通達。


「今度の春の大会で優勝できなかったら、男子バレーボール部は廃部」


この通達に、僕は戦慄した。

名門の名に泥を塗り続けるくらいならば、いっそ廃部にしてくれ、というのが彼らOBの主張だ。

もっともである、至極もっともな言い分である。

しかし、僕にもキャプテンとしての意地がある。

廃部だけは、なんとしても避けたかった。


「男子バレー部のことは、私も聞いてるよ……

 でも、あゆむくん……本気で言ってるの?」


「ああ! もちろんだ!

 僕らの顧問の先生は、バレーボールの知識なんて全くない先生だし……

 かといって、そっちの監督に練習を見てもらうなんて無理だし……」


「それで、わたしに……か……」


沙織はかなり当惑した様子だ。


「そう言われても……、私も自分の練習があるし……

 じゃぁ、あゆむくんだけうちの部の練習に参加する、っていうのはどうかな?

 それでこっちの練習のやり方とか、そういうのを見て、自分の部の練習に反映させるの……どうかな?」


なるほど、それはいいかもしれない。

そのやり方なら、あちらにかける迷惑を最小限に抑えられるだろう。

そしてうちの部の練習の質も上げられる。


「ありがとう沙織! 十分だよ!」


僕らはその案で合意した。



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